富久千代酒造
富久千代酒造
- 鹿島市浜町1244-1
- TEL ╱ 0954-62-3727
- 営業時間 ╱ 9:00~17:00
- 休み ╱ 土・日曜、祝日、8/13~8/15、1/1~1/6
- 直売 ╱ なし(試飲不可)
- 酒蔵見学 ╱ 不可
- ホームページ ╱ http://nabeshima.biz/
酒造りから町づくりまで
世界一の酒を造る酒蔵の挑戦
酒蔵通りを一本入ると、佐賀を代表する銘酒「鍋島」で知られる富久千代酒造がある。蔵の中では、夏場を除き酒造りが行われている。
遡ること1990年代の半ば。酒類の小売免許の規制緩和により酒類量販店、スーパー、コンビニエンスストアが勢いを増していた。その一方で地方の小さな蔵元や町の酒屋が窮地に立たされていた。
これに危機感を抱いた蔵元杜氏の飯盛直喜は4人の酒屋の若手経営者と共に新しいブランドの開発に乗り出した。目指したのは「佐賀、九州を代表する酒」「地元に愛され誇れる酒」を造り育てること。
構想から3年。ようやく発売された酒は、公募により「鍋島」と名付けられた。佐賀藩主・鍋島公に由来するその名前には、佐賀の人々の新しい酒への期待が伺える。
そんな「鍋島」が一躍全国に知られるようになったきっかけが、平成23年(2011年)のIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)のSAKE部門で最高賞であるチャンピオン・サケを受賞したこと。
受賞のニュースが新聞やテレビで取り上げられると、直喜さんはこれを日本酒産地・佐賀のイメージ向上と定着に繋がる絶好のチャンスと捉えた。
このタイミングで酒蔵開きを行うことが日本酒のファンを作ると共に町おこしをする事に一番効果があると考え、受賞のわずか2ヶ月後に多くの市民が一致団結し「鹿島酒蔵ツーリズム推進協議会」を設立。直喜さんが初代会長に就任。第一回酒蔵ツーリズムを開催し、大成功を収めた。
この成功が日本酒を中心とした町おこしに繋がっていった。
それから、10年足らず。「鍋島」は佐賀を代表とする酒として確固たる地位を築き、鹿島酒蔵ツーリズムは10万人を集めるイベントに成長した。だが、富久千代酒造の挑戦は止まるところを知らない。
2021年、妻の理絵さんが中心となり、酒蔵通りの歴史的建造物を改修し、日本酒と食をテーマにした1日1組限定の酒蔵オーベルジュ「御宿 富久千代」を始める。
オーベルジュ内のレストラン『草庵 鍋島』では、佐賀を中心とした九州のこだわりの食材を生かした日本料理と「鍋島」のペアリングが楽しめる。宿泊者は酒造りの様子を一部見学することもできるそうだ。
根底にあるのは、地元鹿島を元気にしたいという思い。古くから受け継がれてきたものを守り、そこから新しい文化を生み出す。「楽しいけれど大変です」と笑う飯盛さん夫婦は、今日も前を向いている。